短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~
「ありがとう、上田。じゃあな」
店を出ると恵一は、雪音を連れてそそくさと帰ろうとする。
「いや、俺も帰りこっちなんで」
「じゃあ俺たちはあっちだ」
「それじゃ俺もあっちです」
弾む足取りで歩く雪音を先に行かせながら、変な押し問答を繰り返す男二人。
問答の末に、上田が突然恵一に抱きついてきた。
変な気を起こしたというよりは、溺れている人が何かにすがるような必死な様相だ。
「先輩、先輩!」
「気持ち悪い、やめろって」
「先輩!」
上田が声を潜めて前を見る。その視線の先に雪音がいた。