マスカレード【仮面de企画】
『あの子』とは誰だろう?――彼は思った。

『本物のセレブ』と言われているところをみると、倶楽部の会員の令嬢だろう。

興味津々に見ていると、間もなく『あの子』が二人に合流した。

最初の二人は、育ちのいいお嬢さんといったところだが、後から来た娘は確かにお姫様だった。

黒みがかった深紅の絹のドレスは、黒のレースがふんだんに使われていて――なんというのだっけ? そう、ゴシック調だ。

オフショルダーのデザインのために肩の半分ほどが露出している。

滑らかな透き通るような肌。

生きたビスクドール

ある種の男達が大金を積んでも手に入れたいと思う人形だ。


モデルとセクシーボディは目配せをした。


「ちょっと、志鶴」

モデルがお姫様を物陰に呼んで小声で話した。

彼の居場所からは丸聞こえだったが。


「あんた、今悩み事ある?」

「ううん、別にないけど」

「美幸は就職に悩んでるみたい。いい? 今日は楽しく過ごすわよ。美幸を元気づけてやらなきゃ」

「分かった」
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