先生とわたし
1月の最後の美術の時間。
これまでと同様に、自画像を描いている。
「放課後、準備室に来て。」
授業の最中に、矢島先生が言ってきた。
「…はい。」
きっと、答え聞かれるんだろうな…。
残りの授業も、あまり集中できなかった。
それに、琴音と舞チャンと話している時も、たまに思考が止まってた。
………
……
…
「千華、帰ろ。」
普段と変わりなく、琴音が言ってきた。
「ごめん、用事あるから先に帰ってていいよ。」
帰るって言っても、駅までなんだけど、その間に色々と話せるからいつも一緒に帰っていた。
「そっか。じゃあね♪」
「うん。ごめんね。」
琴音に黙っているのは辛いけど、今は自分一人で乗り越えるしかない。
トントン…。
「どうぞ。」
「失礼します。」
……
しばしの沈黙。
「どうするか、答え出た?」
迷ったけど…。
「はい。…祐チャンのために別れます。」
「そっ。なら良かった。」
「その代わり条件があります。これからも部活とお昼ご飯は続けさせて頂きます。」
部活を辞めたら、琴音と石黒先生に不審に思われる。
それに、お弁当を作らなくなったらまた店屋物を食べることになるはず。
それだけは嫌だ。
「それくらいならいいよ。2月中には別れてね。」
「…はい。失礼します。」
これでいい。
これで、祐チャンは幸せになれるんだ。
……
祐チャンの下駄箱から、空の弁当箱を取って学校を出た。