千寿桜―宗久シリーズ2―
真実 4
傘を頭上にさし、俺は庭へと出た。



雨は大粒ではないが、霧状に地面から沸き上がる湿気は、足元から身体を包む様にまとわりついてくる。





傘をさしていても、濡れてしまいそうな感じだ。







柔らかくなった土に足を取られながら、千寿の姿を視界に捜す。




源三郎ではないが、この様な雨の中に濡れていたら、間違い無く身体を壊してしまうだろう。









何を考えているのか。



なぜにこうも、千寿は自棄な行動を取るのか。



そこが不可解だと言うのだ。










トキを休ませている馬場の脇に差し掛かり、俺は歩を止めた。









千寿だ………。











馬場の裏、大きな桜の木。




春の華やかさから一転、地味な姿へと変えた桜の木のその根元に、千寿は背を丸めて座り込んでいた。






馬場の影に身を寄せ、目を凝らす。








雨の中うつむき、木の根元へと何度も手を伸ばしている千寿。




何かを、積み上げている様な………?




一体、何をしているのか。






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