千寿桜―宗久シリーズ2―
「長い時、待ち焦がれておりました。あなたが見つけて下さるのを」




見つける?







「どうか、ここへいらして下さいませ。逆らわず、ただ、流れに身を任せて……」





女性は笑う。



笑いながら、細く白い指先を、僕へと差し延べてきた。








「思い出して下さい……真実は………」









動く、唇。




連動する様に、遠くなる僕の意識。







徐々に音の無い世界へと包まれていく僕の瞳の奥には、女性の美貌と、鮮やかな桜吹雪だけが強烈な程に刻まれた。















目が、覚めた。







見慣れた天井。




カーテンの隙間から細い線となり差し込む、朝の光。







ああ………ここは、僕の部屋だ。







夢の臨場感が覚めやらぬ身体を横に転がし、時計に視線を這わす。






午前六時。







「…早起きしてしまった」



独り言と共に、溜息が漏れた。





寝癖のついた髪を掻き回していた両手で、撫でる様に顔を覆う。





眠った気がしなかった。





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