千寿桜―宗久シリーズ2―
彼女にだけ歓迎されていない、そんな感じだな。







いつもの僕ならば、仕方が無いものだと割り切って気にしないのだが………。





何だろうか。


妙に気になる。


何か失礼をしたのだろうかと考えてしまう。









何も語らず、にこりともせず、団欒に加わる様子も無く、静かに食事をすすめている瑞江さん。



その動作は美しくもあり、近寄り難くもあり……。





迂闊に声掛けられない。







違う。



無言の彼女から発せられている空気の流れは、声を掛けるなと訴えかけてくる。






千寿桜の下で、最初に声を掛けてくれた印象とはあまりにも違いすぎる。



正直、戸惑う。




歓迎してくれとは強制しないが、せめて普通にして欲しい。









普通…………。








あれ?









僕は、なぜこんなにも瑞江さんに気を使ってしまっているのだろう。



無意識に。







………普通、とは何だ?





僕は、何を求めている?





彼女と話をしたいのか?








なぜ?







.
< 34 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop