千寿桜―宗久シリーズ2―
様子を一部始終見ていた源三郎だ、意味がわかるのだろうと。









「……そうですねぇ」





言いずらそうに、源三郎は苦笑いをした。











「要するにですね………いえ、お知りにならない方がよろしいのかも…」

「言え」

「え〜………」

「わからんのだ、教えろ」




渋々語り出した源三郎の説明に、俺は千寿の言葉の意味を知ったのだ。








“自分は、妻としての役目はこなすが、愛情まで得ようとは思うな。


自分達の夫婦としての関係は、形としての体裁だ。


それ以上は望むつもりは無い、だからあなたも望まない様に”









それを聞いた俺は、腹の辺りが熱くなった。






「………何て…」




何て可愛いげの無い女だ!!








怒る俺の隣では、だから言いたく無かったのにとぼやいた源三郎。









可愛いげの無さにも程がある!






確かに、この婚姻は政略だ。


だがしかし、あの様な態度………夫としての俺の立場は。







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