スピリット・オヴ・サマー
「ねえ、憲治君、注文は何?」
 憲治はテーブルの横に店員がいることすら気づかなかった。
「あ、ああ、えーと、…ごめん、俺、何分、喫茶店なんてあまり入ったことなくて…。」
 あはは、と照れ笑いの憲治。
 喫茶店より牛丼屋、もしくは安い飲み屋のほうが慣れている。増してや女性と二人きり(しかも、かなり特別な女性である)、差し向かいでお茶を飲むとなると、憲治の「オクテ」であることを晒さないわけがない。
 その様子に千佳子は、くすっと笑って、
「じゃ、私と同じでいいでしょ?」
と言って、アップルリーフを2つ、ホットで頼んだ。
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