森林浴―或る弟の手記―




恥ずかしいのか、それとも合わせる顔はないと思っているのか。


彼女は顔を伏せたまま、失礼します、と言った。


その声は心地よく、耳障りがよいものでした。


「さあ、こちらへお掛けなさい」


私は皮張りのソファを指差して彼女に言いました。


すると、彼女はありがとうございます、と言い、ようやく顔を上げました。


私は彼女の顔立ちに息を飲みました。


彼女は何とも美しい顔をしていました。


そして、その美しさは佐保里姉さんの若い頃に瓜二つでした。


気品を漂わせる程の美しさです。


私は心臓が跳ねるのを感じました。


頭を必死に回転させました。


彼女と修介の年の差は九つ。


ぴったりなのです。



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