森林浴―或る弟の手記―



佐保里姉さんはやはり、それ程までに美しい人だったのです。


私は読んでいた本を閉じ、どうしたの、と尋ねました。


佐保里姉さんはそれには答えずに、私の隣に腰を下ろしました。


その日佐保里姉さんが着ていた白いワンピースは、佐保里姉さんの白い肌によく映えていました。


佐保里姉さんが外に出るのは何日振りだったしょう。


私の頭には、ふと疑問が浮かびました。


佐保里姉さんは縁談の話を知っているのだろうか、という疑問です。


もし知っているなら、どう思っているのだろう。


私は気になってきまったのです。


そして、黙っていればよかったものの、訊いてしまったのです。


心の何処かで、佐保里姉さんを傷付けたかったのかもしれません。


何を考えて生きているのか分からない佐保里姉さんが傷付く顔を見たかったのでしょう。


そう、幼心は時に残酷な凶器になるのです。



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