森林浴―或る弟の手記―




佐保里姉さんが何と答えるのか、私は気になりました。


酒屋に嫁げば、もしかしなくとも今よりいい暮らしが出来ます。


ですが、嘉一さんと駆け落ちなどしたら、待っているのは貧しい暮らしでしかありません。


嘉一さんはそれに慣れているからいいでしょうが、佐保里姉さんはどうなのでしょう。


この屋敷から殆ど出ずに育った佐保里姉さんです。


そんな暮らしに耐えられるのでしょうか。


まだまだ子供な私に、愛と生活を秤に掛けることなど出来ません。


私はただ、佐保里姉さんの返事を待ちました。


「……一緒になります」


佐保里姉さんの返事に驚きました。


そのあと、嘉一さんの嬉しそうな声がしました。



「絶対に、絶対に幸せにします」


嘉一さんははっきりとした声を出しました。


その言葉を聞き、私も嬉しくなりました。


嘉一さんはその言葉通り、本当に佐保里姉さんを幸せにしてくれるだろう。


そう思えたのです。


二人はそのあと、駆け落ちの段取りについて簡単に離してから別れました。



< 38 / 201 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop