森林浴―或る弟の手記―




父は、書斎で首を吊って自殺をしたのです。


それを発見したのは母でした。


母はそのまま気を失い、後始末をしたのは私でした。


兎に角無我夢中でしたので、どのように後始末をしたかは覚えておりません。


精神がはっきりした時は既に、父の葬儀は終わっておりました。


そして、母は入院が必要な程に精神を蝕まれていました。


葬儀に香保里姉さんの姿がなかったことだけは、はっかりと覚えています。


そして、何故来ないのか、酷く不思議に思ったのも覚えています。


勿論、消息が分からない佐保里姉さんもいませんでした。



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