アナログ三姉妹


会話がなくても成立してしまう。


生の言葉を交わさなくとも、それで過ぎてしまう時間。


便利になりすぎて、気持ちを紡ぐ必要がなくなったからだ。


「懐かしくない?」


ひかりが言った。


「そうだな」


物憂げに同意する長男と、


「なにが?」


首を傾げる末っ子。


「よくこうやって三人でご飯食べたのよ。れいちゃんはまだ小さかったから覚えてないでしょ?」


「あんまり覚えてないかも」


「うちは貧乏だったからな。電気も節約して、冬なんかは暖房もないから、毛布を被って飯を食ってたんだよ」


「へぇー、そうなんだ」


「れいは小さかったから、訳も分からず喜んでたっけ」


「そうね、キャンプみたいって」


兄と姉は、我が妹に微笑む。


大きくなった、妹に。


そして突然、


「お兄ちゃん、ありがとう」


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