アザレア
『け、結構です!』

『何で?』

『何で、って……その、……決まっているでしょう!?』

『決まってねーよ』

驚いていたのも束の間、我に返った私が全力で拒んでも誠は我を貫いた。


『とにかく遠慮すんな』

『いや、遠慮とかって問題じゃねーだろ』

『んじゃ、これは配慮だ』

『はいりょ、ねぇ……』

途中、見兼ねた八嶋さんが間に入ってくれたけれど、それも無意味。
逆に言いくるめられた。


更には契約書の記入ついでに私の両親にも挨拶がしたい、と言う誠の律儀さには敵わず、その足で我が家に案内する事になってしまったのだ。
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