失恋レクイエム ~この思いにさよならを~
開けたドアを支え、彼は後ろの人に入るように促す。
何かを言ったけれどわたしの耳には届かない。
「足もと気をつけて」とか「ドア重たいよ」とかそんなところだろうか。
イヤだ…。
そんな優しい顔、しないで。他の人に向けないで…!
彼の横をすり抜けるようにして姿を見せたのは、いかにも女らしい女性だった。
茶色い髪は肩の辺りでゆるくカールして、膝丈のスカートとアンサンブル。高すぎないヒールに収まる足首は細くて。
おしとやかそうなその人が彼に向けて微笑んだ。