失恋レクイエム ~この思いにさよならを~

「それに、羽賀くんには可愛い彼女がいるって言ってあるから」
「いやいや、嘘はダメでしょ」
「え?あの子とまだ付き合ってないの?」

 うそでしょ?と目を丸くする谷津さん。あの子、の事が時森さんという事は考えなくてもすぐにわかる。

「付き合うも何も、ここ数週間は連絡もなしです」
「ちょっとちょっと、どうしちゃったのよ」
「もう自分のことは気にしないでくださいって言われちゃって・・・ちょっと踏み込みすぎちゃったのかなぁと反省しています」
「羽賀くんは、どうしたいの?」

 谷津さんからの直球に、言葉が詰まった。俺がどうしたいのか。それは、谷津さんに聞かれる今の今まで、考えもしなかった自問だった。

「このまま終わって良いのか、そうじゃないのか。答えは二つに一つだと思うけど?」

 谷津さんの言う通り、答えが二つに一つだとすれば、俺の答えはもう決まっていた。
 その日、谷津さんと別れた俺は迷わず時森さんにメッセージを送る。

〈会えないかな〉

 もしかしたら返事は来ないかもしれない。それでも、何もしないでこのまま時森さんとの時間を消し去るという選択肢は無かった。

 ポケットにしまったスマホが震える。

 時森さんからだろうか、と心臓がばくばくと波打つ。緊張しながら開いたメッセージは予想通り彼女からのもので、一言こう書かれていた。


〈明日、8時にエリザで待っています〉

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