約束の場所【短編・完結】
『千――』
昔のあたしが
愛しいその人の
名を呼ぶ

『景丸…』
山桜の心が
あたしの全身に
流れる

想いはひとつ

『ずっと…
会いたかった…』

悲しい記憶

離れ離れになったふたり

再び出会うことは
叶わないまま
別々の土地で
その生涯を終えた

しかし偶然にも
ふたりが埋葬された場所には
桜の木が植えられた

『ここにいる…』

いつか再び出会うための
目印かのように

あたしの
会いたかった人

その昔
あたしが愛した
たった一人の人

『千』

今あたしは
ここでアナタに
巡り逢えた――…





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