蜜色オフィス


「……っ」


宮坂のキスとは、違うキス。

吐き気がする。
咥内を這う舌も、沖田さんの息遣いも……。

気持ちが悪くて、死にそう。

涙が滲んでるけど、それをぐっと我慢する。
沖田さんは、私が泣いてボロボロに傷ついて、宮坂に頼るのを望んでる。

だったら。

これから何されたって、涙なんか見せないで、なんでもない振りしてやる。
普通に会社に行って、お昼休みには梢とランチ食べて。
宮坂にだって平気な顔して笑ってやる。

沖田さんの思い通りになんか、絶対にさせない。


ただ時間が経つのを待っていると、ポーンって明るい音がしてエレベーターが開く。
それを聞いた沖田さんが、やっと私から離れた。


「もう受付済んでるから行こうか」


そう言って胸ポケットから見せたのは、カードキー。
シルバーのカードには204って数字が書いてあった。

宮坂の部屋番号と一緒だ、なんて思って、胸が鳴く。


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