蜜色オフィス


「あの人に教えてもらったんだ。
それより、またすぐお店来てくれるって言ったのに全然きてくれないんだもん。
メールだって返してくれないし~」


お店……って事は、キャバ嬢か、なにかかな。
そんな事を考えながらも、私の視線は一ヶ所で止まってた。

カツンって、かすかな足音を響かせて私の前まできた宮坂から、目が逸らせない。


「ね、今日は時間あるんでしょ?
だったらこのまま瑞穂と同伴して?」
「あー……、でも俺これから用事があるし」
「それって瑞穂とどっちが大切なの?」
「難しいな」


ハハって笑う沖田さんに、“瑞穂ちゃん”が言う。


「それに、今日は沖田さんところの部長さんもきてくれるって言ってたよ。
接待なんだって。
瑞穂と一緒に来てくれないと、部長さんとか相手の会社の人に沖田さんの悪口言っちゃうから~」


沖田さんが苦笑いしながら「まいったな」って呟く。
目の前にいる宮坂が、じっと私を見てから沖田さんに視線を移した。



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