蜜色オフィス


言わなくちゃ。
別れようって……、言わなくちゃ。

あんなに覚悟決めたのに……、たった一言が喉に詰まって出てこない。

別れよう。別れよう。わかれよう……。
そう、言わなくちゃ。


「早川?」


宮坂の、少し心配するような声が、狭い密室に静かに落ちる。


どうしよう……。
言えないよ……、宮坂。

別れようだなんて、言えない。
そんな言葉……、言いたくない―――。


こみ上げてこようとする涙をぐっと我慢する。
胸のあたりが苦しくて仕方なかったけど、なんとか笑顔を作って宮坂を見た。


「そうだね」


宮坂は、そんな私を少しの間見つめてきて。
作り笑いがバレたのかって不安になってきた時、エレベーターが1Fについた。

ドアが開いたのを確認した宮坂が、私の肩に手を回してロビーに下りる。



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