蜜色オフィス


期待なんかした私がバカだった。
……しかも、恥ずかしい期待なんかしちゃったし。

もしかしたら……、もしかしたら、宮坂は私の事、なんて。
うぬぼれるにもほどがある。

梢じゃなくても、明日の私でも笑っちゃうし。


もう、忘れよ。
昨日の沖田さんとの恥ずかしい夢も、宮坂相手にした変な期待も。

……ついでに、沖田さんの浮気疑惑と、うっかり宮坂相手にドキドキしちゃった気持ちも。

全部、全部、忘れよっと。
うん。

臭いモノには蓋をしろ、だ。
昔の人の言葉には従うべきだよね。

……そんな事ができるなら、とっくにそうしてるけど。


「早川。ひとつだけ言っておくけど」
「え?」
「―――昨日。
早川を抱いたのは、俺だから」


アパートの前で車から降りようとした時、宮坂が言った。



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