蜜色オフィス


焦ったせいで大声になった。
自分の口を押さえながら、周りに人がいないかキョロキョロしてると、宮坂が笑う。

あんな事言って……、一応、元気付けようとしてくれたのかな……。
それとも、意地悪で言っただけ?

よく分からない宮坂の心情について考えながら、ふぅっとため息を落とした。


「でも、沖田さん、あんな爽やかな外見なのに……。
最近の男子は草食とか騒がれてるけど、そうでもないのかも。
男は誰でも獣だって、梢がいつか力説してたし」
「“男は”? 女もだろ」
「……それ、私の事言いたいの?
さっきから人の事淫乱とか獣とか!」
「別にそうは言ってないだろ」
「言っとくけど、私そんなんじゃないから!
あんな風に自分からキス求めちゃったのとか……、恥ずかしいけど、は、初めてなんだからね!
沖田さんとしたって、あんな風にならなかったもん!」
「……へぇ。そうなんだ」
「別に、欲求不満とかじゃないから!
なんとなく……、ただ、なんとなく、宮坂の雰囲気に呑まれちゃっただけで……」






< 59 / 302 >

この作品をシェア

pagetop