泡沫のキス
「それに、すごくきれいな歌だった。聞いたことがない歌だけど、曲名は?」
こんな人が実際にいるのか、と思わず目を見開いていた私は、その質問に答えるのに遅れた。
「…あ、知らない、です」
「そっか、残念」と、わざとらしく笑って目を細めた彼に、私は同時に不信感を抱いた。
笑ってるのに、笑ってない。
なんとなく、怖い。
心の奥で何を考えているのか、さっぱり分からない人だ。
会ったばかりの初対面の人に対して失礼だが、苦手なタイプだ。