『短編』恋するハーモニー
七海はコートを羽織り、マフラーを首に巻き、手袋をはめると、自転車置き場へ下りていった。
頬に当たる風が、突き刺すように冷たかった。
思わず手を擦り合わせてしまう。
「早く帰ろ」
七海は自転車にまたがり、帰路を急いだ。
向かい風が強くて、一生懸命漕いでいるわりには、あまり前に進んでくれない。
のろりのろりと進んでいると、後ろから「お~い」と声をかけられた。
よろよろしながら振り返ると、頬を赤くしながら廉(れん)が走ってきていた。