彼と彼女と彼の事情
「奈緒も知ってる通り、親父の会社、親父が一代で築き上げただろう?」
「うん」
「だから、親父も思い入れが強いんだよな。
それなのに今、経営状態があんまりよくなくてさ……」
「そうな、の?」
「あぁ。政権が変わって、道路公団民営化の煽りを完璧に受けてるし。
特に、ここ1年、公共事業がらみの仕事が激減したからな……」
郁人に聞いていたよりも、さらに深刻な内容だった。
郁人からは、会社を大きくしたい旨だったのに――。