彼と彼女と彼の事情


途端に、顔も分からない見合い相手の人が頭に浮かんだ。


「お見合い相手の方に悪いんじゃない?
それに、こんなことがお父さんたちに知れたら大変なことになるよ」


「それは大丈夫!
あっちだって、親の言いなりで見合いしてるわけだし、俺のことなんて本気になるはずないから。
そうした心配いらないよ!」


「そんなぁ……」


それじゃあ、あまりにも都合がよすぎるんじゃない!

と言いたかったけれど、ぐっと言葉を飲み込んだ。


しっかりと断ることができなかった私は、曖昧なままその日、隼人と別れた。 



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