彼と彼女と彼の事情


泣きじゃくる私を抱き締めたまま、黙りこくった郁人。 


その胸の中は、とても暖かかった。


ギュッと抱き締められた中から伝わる、郁人の鼓動。


そして、吐息……。



言葉はなくとも、郁人の優しさが、痛い程に伝わってきた。


眼下の電車の音が、心地よいリズムを奏でる。



それを耳にしながら、しばらく彼の胸に抱かれたまま、温かな時間を過ごした――…。 




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