彼と彼女と彼の事情
途端に、優しい郁人の顔が頭に浮かんだ。



と、同時に…… 



いまだに忘れることのできない隼人の顔も、はっきりと頭に浮かんだ。



重なり合う二人の顔―― 


私は、隼人の、少し強引だけど、何に対しても熱いところが好きだった。



一方、郁人の、明るさの中に、優しくて、細やかな気遣いができる点にも惹かれていた。



二人を天秤にかけるのは、至難の業だった。 



郁人に気持ちが傾いてきたのは、事実だけれど…… 


これが恋愛感情なのか、同情なのか、はっきり区別できないでいた――…。





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