彼と彼女と彼の事情
そんなことを思い出しているうちに、だんだんと微睡んできた。 



――久しぶりに夢を見た。


つくしやタンポポが咲いている広い野原で、四つ葉のクローバーを探している私。


探しても探しても、なかなか見つからなくて、もう諦めようかと思った矢先、 

「こっちにあるからおいで」と、誰かに手を差し伸べられた。 


見上げると、優しそうに微笑む人の顔があり、安心したようにその手を掴んだ。


そして、目が覚めた――。


あの人はいったい誰だったんだろう?と、何度も思い出そうとするけれど、顔がはっきり思い出せない。


でも、手の温もりだけは覚えていた。


すごく暖かくて、大きな手。


この手を知っている!と、直感的に思った。




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