彼と彼女と彼の事情
高鳴る気持ちを抑えようと。
胸に手を当て、深く息を吸い込んだ。
――…よしっ。
気持ちが整った。
子どものようにギュッと目を瞑る郁人は、やっぱり可愛くて。
悪戯でもしたくなる程に。
その差し出す右手を躊躇わず、私は握った。
――あっ!この手……。
「奈緒、本当にいいのか?本当に俺でいいのか?」
握った手に、さらにもう片方の手を添え、何度も確認する郁人に、「うん、うん」と頷いてみせた。