彼と彼女と彼の事情
「奈緒…ありがとう。本当に……ありがとう!」
ガシッと掴まれ、再び、私は郁人の胸に収まった。
ギュッと抱き締められた腕の中は郁人の息遣いとともに、トクントクンという優しい音が聞こえてきて、とても心地よかった。
「奈緒、これからもよろしくな」
「うん。こちらこそ」
壊れ物を扱うかのように、郁人は優しくキスをした。
唇に触れるか、触れないか分からないくらいの、ちょっとだけのキス……
そして、もう一度、目が合った瞬間、
再び、唇が重なった。