ワイルドで行こう

 英児は言う。可愛く愛されるだけの女じゃなくなってきた。少し前、彼が琴子を抱きながら狂おしい声でそう耳元で囁いたのを、しっかり覚えている。
 タキタの女だもの。車だけじゃない。貴方にも乗り上げて、私、貴方のこと愛していく。
 言葉にしないでそう見つめて心で唱える。それが、やっぱり英児の目にはちゃんと伝わる。
 自分に乗り上げている、龍星轟のジャケットを羽織った白い裸体。英児はそんな女の肌を乳房からするりとなめらかに下へゆっくり撫でると、最後にジャケットの裾をまくり上げ、丸出しになっている白い小さな尻を両手で柔らかに掴んで笑った。
「間違いなく、これで完全に俺の女。龍星轟タキタの女ってわけだな」
「ほんとに?」
「ああ、車屋タキタの女だって、俺の女だって誰に言ってもいい」
 僅かに潤んだ彼の漆黒の瞳。それを見て、琴子から英児の首元にきつく抱きついた。
 熱く見つめあう一瞬、でもすぐにふたりは激しく深い口づけを繰り返した。

 窓から木々のさざめきの風、僅かな夜明かりに忍びながら、裸の男とジャケットを羽織った女は熱く繋がって愛し合う。
 遠く不如帰の鳴き声が聞こえる頃には、龍星轟のジャケットはベッドの片隅に。その傍で白い裸体だけになった女を胸の下に抱いた男が激しく絡んで、女を愛に鳴く声に変えていた。


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