ワイルドで行こう

5.リトルバード・アクセス《1a》 (小鳥高校生)






 お前の母ちゃん、元ヤンだろ!
 



 気持ちより先に身体が動いてしまうことが多い。
 側にいた友達の『小鳥ちゃん、ダメ!』という声が聞こえたけれど、気がついたら目の前にいる男子の胸ぐらに掴みかかっていた。

 教室前の廊下、初夏の風が入り込んでくる窓辺で、茶髪男子に挑むロングポニーテールの女子。

「はなせや。クソ女!」
「花梨ちゃんに謝りなさいよ!」

 自分より背が高い男子も小鳥の襟元へと手を伸ばしてきたので、咄嗟の反射神経の防御、その腕を払いのけようと小鳥の手がシュッと鋭く空を切る。
 だけれどその男の腕を弾こうとしたのに、

「いってぇ!」

 爪先が彼の頬をかすった……。じゃない、強くひっかけてしまう。

 昨夜切り揃えたばかりの爪はまだ丸みがないから、たぶんひっかいたらギザギザしていて痛いはず。小鳥も『あ、ごめん』と思ったのに。

 気がつけば、彼の頬には真っ赤な筋が二本も。

「てめえっ、なにすんだよ!」

 相手も普段、それほど激高する男じゃない。なのに、その茶髪の男がもんのすごく頬を真っ赤にして小鳥に向けて、腕を大きく振りかぶってくる。しかも思いっきりぶったたく勢いの顔!

 ――ガッシャーン。

 男が振った手。それが小鳥の、彼をひっかいた腕を弾き飛ばしていた。
 しかもその手が、なんとすぐ横にあった窓ガラスをいとも簡単に割ってしまった!





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