ワイルドで行こう



 まままま、待って? 竜太だけじゃなくって、なにそれ。ヤダ、もう、頭パンクする! うちのクラスの男子、おかしい! なんで男勝りな私なの!?

 でも誰が申し込んでくれても、小鳥の返答は決まっている。
 それを言おうとしたら、竜太から言いだした。

「きっとお前の気持ちって。花梨に聞いた時から変わっていないと思うから。それとなく土居にも告げていいかな」

 彼の横顔が凍ったのを小鳥は見た。自分のことのように口惜しそうに歯を食いしばっているような、そんな力んだ表情。

 そしてそれは友人の土居君同様、竜太も同じ気持ちでいるのだと――。

 だからって。小鳥は申し訳なくは思わない。そして彼等に、きちんと今こそ告げるべきだと毅然とする。

「そうして。私、ずっと同じ人を好きだし……。これからもきっとその人が好き」
「そっか。それでも納得しなかったら、あいつ、当たって砕けに行くと思うから、頼むな」
「わかった。ハンパなことしない。はっきり言うよ。私の今の気持ちを……心苦しくても。そして気にかけてくれて有り難うって言う」
「うん、安心した。じゃあ、それだけ」

 すっと、潔く――。竜太が背を向ける。
 ネクタイを緩めている夏シャツの後ろ姿。彼の茶色の毛先が耳元をくすぐる、そんな夏風が吹いてくる。

 そのまま、行ってしまうと思ったのに。竜太は途中でまた立ち止まった。

「そいつ。お前のことどう思ってんの」

 竜太にもきちんと言うべきなのだろう……と、小鳥は口を開く。

「まだ子供だと思ってる」
「望み、あるのかよ」


< 545 / 698 >

この作品をシェア

pagetop