本当の幸せ
もう終わりだ。
目を強く瞑ったが、
痛みは一向にこない。
恐る恐る目を開けると。
『……………の、ざか?』
野坂が無表情で
慎司の持っていたナイフを
素手で掴んでいた。
誰もが驚き、
血の滴る野坂の手を
凝視していた。
『さっきから
黙って聞いてれば…
あんたは一番この子を
大切にしなきゃならない
立場なんじゃねぇの?
それなのに……
大切な女の子に
殺すなんて言うな。
この子は物じゃねぇ。
一人の人間なんだよ!』