給湯室の恋の罠
「あっ、待って……」


私はとっさに倉木さんのスーツのジャケットの裾を掴んでいた。


「あっ、すみません」


自分の行動が恥ずかしくて、私の顔はますます赤くなる。


「いえ、いいですよ。それより、どうかしました?」


そんな私に優しく問い掛ける。


「あっ、あの……」


今がチャンス。

今、気持ちを伝えなきゃ――…





「私……、倉木さんの事が……、好きでした」





……って


「あれ?」


私、今、何て言った?


そんな私の言葉に倉木さんも少し驚いていたけど


「ありがとう」


優しく笑って、そう言った。


「えっと……、すみません。いきなり変な事言って」


自分でもわけがわからない。


「いいえ、お気持ちは嬉しいですよ。じゃぁ、あまり遅くならない程度に、残業頑張って下さいね」

「はい、お疲れ様です」


喫煙ルームから出て行く倉木さんの後ろ姿を見ていた。


私、倉木さんの事、好きなんだよね?


なのに

“好きでした”

って……

なんで?

なんで、過去形?


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