給湯室の恋の罠
みんなが帰った部屋に一人。

私は先輩から引き受けた仕事をする。


「はぁ……」


キーボードを叩きながら、自然とため息が出る。

このため息は残業に対してではない。

クリスマスイブの今日。

家に帰っても一人。

特にする事もなく、テレビをボーッと見ているだけなんだから。

だから、こうして残業になるのはかまわない。


ただ……


「何で誘ってくれないのよ」


パソコン入力する手を休め、またため息を吐く。


私の誕生日は11月。

誕生日の日も福本さんは食事に誘ってくれ、一緒に過ごした。

だから、クリスマスも福本さんから誘って貰えるとばかり思っていた。

こっそり福本さんへのプレゼントも用意していたのに。

だけど、今日になっても誘われる事はなく。

福本さんは残業もなしに、そそくさと帰って行った。

今までの私なら、誘ってもらえないのなら、自分から誘う事が出来た。

だけど、福本さん相手だと、なかなか自分から行けないんだ。


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