愛を餌に罪は育つ
柔らかい風が吹き、私の髪を揺らした。


風は柔らかいのに肌に触れた風は冷たくて身震いした。


温めるように私は自分で肩を抱き、擦るように腕を動かした。


暖かくなってきたとはいえ、まだ夜は冷える。


気付けば公園内にはポツポツとしか人がおらず、犬の散歩をしている人は一人も居なかった。


結構ここにいるのかもしれない。


そう思い腕にはめている時計を見ると、既に二十二時を過ぎていた。


過ぎているもなにも、もう二十三時になろうとしていた。



「ヤバッッ」



まさかそんなに長い間ボーっとしてたなんて思っていなかった。


もう何やってんのよ私ッッ!!


まだ秋が帰ってきてないといいんだけど。


私は走って公園を出ると直ぐにタクシーに乗り込みマンションへ向かった。


まだ秋が帰ってきてませんように、と何度も何度も願いながら。






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