愛を餌に罪は育つ
「ちゃんとした証拠があるわけではないんです」
「え――?」
「梓の妹、涼ちゃんが死ぬ前に付き合っていた彼の名前が朝陽という事、その彼女の名前が美咲という事、そして貴女と彼のお揃いの指輪を持っていたという事しか分からないんです」
「じゃあ――妹さんのお腹にいた赤ちゃんって――――」
『赤ちゃん!?』
翔太君の大きな声が病院の静かな廊下に響き渡った。
「亡くなった妹さんは妊娠していたと梓から聞きました」
「えぇ、今となっては父親が名乗り出ない限り誰が父親かは分からないでしょう。けれど梓は、野坂さんを疑っていました」
仮に朝陽が父親だとしたら、それこそ私はもう朝陽がどういう人間なのか分からなくなってしまいそうだった。
彼は誰に対しても過激な愛情を抱いているんだろうか?
実は他にも浮気相手がいるんじゃないんだろうか?
数人の人間を同時進行でそこまで深く愛せるんだろうか?
頭はいっぱいで、心は押し潰されそうだった。
「え――?」
「梓の妹、涼ちゃんが死ぬ前に付き合っていた彼の名前が朝陽という事、その彼女の名前が美咲という事、そして貴女と彼のお揃いの指輪を持っていたという事しか分からないんです」
「じゃあ――妹さんのお腹にいた赤ちゃんって――――」
『赤ちゃん!?』
翔太君の大きな声が病院の静かな廊下に響き渡った。
「亡くなった妹さんは妊娠していたと梓から聞きました」
「えぇ、今となっては父親が名乗り出ない限り誰が父親かは分からないでしょう。けれど梓は、野坂さんを疑っていました」
仮に朝陽が父親だとしたら、それこそ私はもう朝陽がどういう人間なのか分からなくなってしまいそうだった。
彼は誰に対しても過激な愛情を抱いているんだろうか?
実は他にも浮気相手がいるんじゃないんだろうか?
数人の人間を同時進行でそこまで深く愛せるんだろうか?
頭はいっぱいで、心は押し潰されそうだった。