愛を餌に罪は育つ
病院の駐車場に止まっている乗用車に乗り込むと、朝陽はエンジンをかけ車を動かした。



『何?何か顔に付いてる?』

「ううん、免許持ってたんだなぁって思って」

『よく二人でドライブに出掛けたりしてたんだよ』

「そうなんだ――」



そう言われても何も思い出さない上に懐かしさも感じなかった。



『そんな顔しないで。また二人で思い出を作っていこうよ』

「うん、ありがとう」



そうよね――思い出せないなら、これから作っていけばいいんだよね。


朝陽のマンションは2LDKで一人暮らしにしては広々とした部屋だった。



「綺麗にしてるんだね」

『綺麗にしたんだよ。美咲に幻滅されないようにね』



朝陽のはにかんだ顔は母性本能を擽る様な顔かもしれない。


これで年上だったら驚きだ。



「朝陽は今いくつなの?」

『僕は28歳だよ』

「えっ!?」



まさか年上だったなんて――失礼だとは思いつつも、驚きを隠せなかった。


勝手に勘違いしてたのは私だけど本当に驚きだよ。



『そんなに驚かなくてもいいだろ!!傷付くなぁ――』

「ご、ごめん」

『嘘、気にしてないよ。よく童顔だねって言われるし、慣れてるよ』



そう言って朝陽はキッチンへと足を進めた。


オープンキッチンになっている為、リビングにいても姿は丸見えだ。





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