愛を餌に罪は育つ
美咲は笑って答えた。



「副社長」



朝陽は眉間に皺を寄せ、隠す事なくあからさまに不機嫌な顔をした。



「副社長の事は人として好き。朝陽の事は好きじゃない――愛してる」



朝陽は口を開け、美咲の言葉に呆気にとられた。


そんな朝陽を見ておかしそうに笑う彼女。


いったい彼女にどんな心境の変化があったのだろうか。


店内に流れる穏やかなメロディーは今の二人の雰囲気にとても合っていた。



『だったら僕と一緒だ。僕も美咲を愛してる』



美咲はフォークをお皿にのせ、口元を紙ナプキンで拭うと頭を下げた。



『み、美咲!?』

「たくさん酷い態度とってごめんなさい。朝陽をいっぱい傷付けた――本当にごめんなさい」



朝陽の手が美咲の頭に触れそのままそっと撫で下ろした。



『顔を上げて。ちゃんと話をしよう?』



ゆっくり顔を上げた美咲の頬は濡れていた。


朝陽はその涙を愛しそうに拭った。






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