愛を餌に罪は育つ
梓の視線がなくなったと思ったら、今はひしひしと加藤さんの視線を感じる。



『今の彼氏って何の仕事してんの?』

「な、何のってッッな何でですか!?」



心臓バクバクだ。


事情を知ってる梓は笑いを堪えながらお茶を飲んでいる。



『だってそのでっかいダイヤ、普通のサラリーマンじゃ無理でしょ。自営業とか?』

「そ、そんな感じですッッ」

『玉の輿じゃん』



とにかく笑って誤魔化した。


喋ったら絶対ボロが出ちゃう。



「加藤君は今の彼女と結婚は考えてないの?」



見かねた梓が少し遅めの助け船を出してくれた。


もっと早く話題を変えてくれればいいのに――。



『意識はしてるけど、考えてるって程ではないかな。結婚ってよく分かんねぇよ』

「まだまだお子ちゃまだね」

『うっせぇよ』



加藤さんが親子丼をガツガツ食べる姿は何だか幸せそうに見えた。


彼女の事に関して素っ気ない感じだけど、本当は凄く好きなんだろうなって思った。


今の仕事を辞めたら、私も堂々と秋の事を話してもいいんだよね――。


あんなに辞めたくないと思っていたのに、今ではいつ頃辞められるかなって思っている。


私って本当単純。






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