愛を餌に罪は育つ
唇を割ろうとする舌の感触がして、私は彼の胸を押した。



「口の中、切れちゃって――」



私の言葉に眉尻を下げながらも優しい笑みを向けた彼は、最後に触れるだけのキスをした。


唇を拭いたい衝動を抑え、私は笑って見せた。



『手を出して』



言われるがまま手を出すと、彼は私の掌に錠剤を三粒のせた。



『睡眠薬だよ。一緒に眠ろう』

「――うん」



私たちは同時に薬を口に運び、ペットボトルの水を口の中に流し込んだ。


しちりんのせいで、暑苦しくなり始めていたからか、ただの水なのに凄く美味しく感じた。


私たちは手を繋ぎ、若干後ろに倒した背凭れに体を預けた。



『美咲』

「――何?」

『愛してるよ』



私はニコッと微笑みゆっくり目を閉じた。


貴方からの愛の言葉なんていらない。


謝罪の言葉も欲しいとは思わない。


そんなものを貰ったところで何一つ戻ってはこないから。


空気が段々と薄れゆく中、隣にいる男への嫌悪や軽蔑といった感情ばかりが私の心を埋め尽くしていった。


秋の存在こそが私の全て。


秋、何処に居ても私を見付けてくれるって言ってくれた言葉、信じてるからね――。






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