愛を餌に罪は育つ
一昨日降った雪がまだ所々に残っている。


道の脇に残った黒く汚れた雪の塊を見ると余計寒さが増すように感じる。



「朝陽も今日から仕事だったんだよね?私のせいで長く休ませちゃってごめんね」

『気にしないで。普段休みを取らないから有休が余っちゃってしょうがなかったんだ』

「朝陽は優しいね、ありがとう。ところで朝陽って何の仕事してるの?」

『歯科医だよ』



想像もしていなかった答えに驚いて固まってしまった。


サラリーマンかお洒落だからアパレル関係とか美容関係だと思ってた。



『口開いてるよ』

「えっ、あ――うん」



急いで口を閉じ歩き始めた私を見て朝陽は笑っている。



『意外だった?』

「――うん」

『美咲のお兄さんも歯科医で同じ職場だったんだよ。歯の検診を受けに来た美咲を担当したのが僕で、それがきっかけで僕たちは仲良くなったんだよ』

「そう、だったんだ。じゃあ朝陽はお兄ちゃんの事もよく知ってるんだろうね」

『うん、尊敬する先輩でもあり大切な友人でもあった。今でも信じられないんだ――圭(ケイ)がいない事が――――』



今にも泣いてしまいそうな程切ない顔をする朝陽を見て胸が苦しくなった。






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