10年越しの恋

夏の思い出

サンフランシスコへはバスで向かう。
飛行機が苦手な私にはとてもありがたい選択。

1か月を共に過ごしたファミリーとの別れにしんみりする人、もうすでに気分を切り替えはしゃぐ人。いろんな声が聞こえてくる。

私は一番後ろの席に智ちゃんと座っていた。

「楽しかったなぁー。あと3か月ぐらい居たい感じ。瀬名さんは研修どうでしたか?」

「うん。すっごい勉強になったよ」

「そかぁ。だって私たちの半分ぐらいしか遊ばないで頑張ってましたもんね」

楽しそうに話しつづけていた智ちゃんがうとうとし始めたので、MDを再生し窓の外へと目を向けた。

流れる景色はアメリカそのもので、広大な土地に点在する住宅街が時々見え隠れするフリーウェイを走り続けた。

「もうすぐゴールデンゲートブリッジが見えます」

そんな添乗員の声に目を覚ました。

ホテルにチェックインを済まし、夕方の街へ出た。

同じ西海岸の町なのにL.Aとはまったく趣が異なる。
ホームレスの多さが目につき、あまり好きになれない感じだった。

誘われるままに智ちゃんや潤くんと夕食を済まし、もう少し観光を続けるというみんなと離れて先に部屋へ戻った。

忙しくここ数日雅紀に電話をしていないことに気づきロビーにある公衆電話へと向かった。

「もしもし? 瀬名?」

「うん、久しぶり。なかなか電話できなくてごめんね」

「もう観光に入ったの?」

「今日からサンフランシスコ。まあちゃんはどうしてる?」

「元気だよ。サークルの合宿行ったり、バイトしたり」

「まあちゃんがバイト? どういう風の吹きまわし?」

「なにそれ! だって瀬名いなくて暇なんだもん。でも少し会えなくて寂しくなってきた」

雅紀の言葉にずっと張りつめていた気持ちが緩んで少し切なくなる。

「瀬名、どうしたの? なんかあった?」

「ううん。ちょっとだけ急に寂しくなったの」

「もうすぐ会えるよ。空港まで迎えにいくから。だからあと少し楽しんでおいで」

「ありがとう」

電子音がテレカの残り度数の少なさを知らせる。

「もう切れちゃうかも」

「会えるの楽しみにしてるからね、愛してるよ」

「ありがとう」言い終わると同時に電話が切れた。
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