10年越しの恋

学生生活の終焉

9月に入っても厳しい残暑の中、残り少ない夏休みを楽しんだ。

たくさんの時間を二人で過ごし、付き合って3年を越えても、
 
”よくそれだけ一緒にいて飽きないね”と言われるぐらいだった。

休み明け、久しぶりにさや、まさよとランチ。

「就職決まったって! おめでとう」

「ありがとう! でも金融なんだよね……」

「なに言ってんの、あんな有名な銀行! すごいよ」

「そうだよ、さすがだね」大学名物のソフトクリームを片手にそう言ったさや。

「説得力ないよー」とまさよがぼやく。

そんな二人の姿も久しぶりで、それだけで楽しい。

「それより今度うちで鍋パーティーなんてどう? まさよの就職祝いも兼ねて」

『いいねー 瀬名の家で鍋』

互いにスケジュール帳を取り出し日にちを決める。

「じゃあ、再来週の土曜ってことで!」

久しぶりの食堂で相変わらずオムライスを食べながら学生最後の夏の報告をした。


当日、私は雅紀と二人で鍋の材料の買い出しにスーパーへと向かった。

「キムチ鍋と適当におつまみでいいよね?」

そういいながら野菜やお肉を選ぶのはプチ同棲気分で楽しい。

「ねぇ、瀬名の得意なから揚げも作ってよ」

うれしそうに鶏肉の入ったパックを持ってくる。

「仕方ない! 作りますか」

「やったね」

そんな無邪気な雅紀の笑顔が大好きだった。


旅行へ出かけた両親のいない家に戻り準備を進める。

「何か手伝おっか?」白いエプロンをして大急ぎで材料を切っている私の隣に立った。

「もう大体出来上がってるからいいよ」

そう言いかけると後ろからギュッと抱きしめられた。持っていた包丁を思わず落とす。

「もお、 あぶないよ」

少し怒った顔で振り返ると目の前に雅紀の顔がある。

「だってなんかエプロン姿に発情しちゃった? みたいな」

そのまま近づくと、私を壁側に押しつけるように何度も唇を重ねる。



みんなの到着を知らせるチャイムが鳴り響く。

慌てて玄関へと駆け降りた。

「なにー 瀬名の顔赤いよ! もしかして、お邪魔だった?」

「そんなわけない…よ。一生懸命準備してたの」

そんなさやの声とともにみんなが集まった。

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