10年越しの恋
正直この年の秋はほとんど記憶がない。

親の顔を見たくなくて家の中でもほとんど自分の部屋に閉じこもったままだったし、元気のない顔を誰にも見られたくなくて友達にも会わなかった。

眠れない日々が続くと雅紀に電話をして気持ちをぶつけた。

真夜中に何度も泣きながら「会いたい」と呼びだした。


「瀬名が眠れるまで起きてるから安心して」


広いベットの上で後ろからそっと私を抱きしめるように傍にいてくれる。

怖い夢を見た夜には子供をあやすようにずっと背中をさすってくれた。


「頑張ってもう一度二人で幸せになろう」

雅紀の愛情が悲しみに支配され、一人真っ暗な海の底で動けなくなっていた私を孤独の淵から引き揚げてくれたんだ。


もう冬を感じる冷たい風が吹き始めた頃突然の提案。


「自分の気持ちを吐き出してみたら?」


「えっ?」


「一人で抱え込んでるから辛いんだよ」


「瀬名文章書くの好きだろ、だからHP作って詩でもどんな形でもいいから自分の中にあるものを表現してみたら?」


当時HPを作るのは専用ソフトがあっても難しかったのに1週間で雅紀は立ち上げてくれた。

私がワードに文章を書いてメールで送る。

それを元に雅紀がHTMLを組む。

二人の共同作業で進められていくHPはまるで壊れかけた関係が再構築されていく過程そのものだった。

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