10年越しの恋
浩一はまとめてあった私の荷物を手にして玄関へと向かって行った。

「駅まで送る」

車内は無言のままだった。

「さようなら」

そう言って改札を抜けようとした時、

「待ってて」そういい残して浩一はどこかへ走って行った。

そして息を切らしながら、一輪の花が咲くチューリップの鉢植えを抱えて戻ってきた。

「瀬名、チューリップ好きだったろ。幸せにな」

そういって私に手渡し、頭を撫でた。

「いままでありがとう」それ以上言葉を続けることができないまま浩一に背を向けて、ホームへと歩きだした。

これで終わったと思っていた。
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