10年越しの恋
「だから彼氏なんだろ」


「彼氏だからこそ好きって気持ちだけで向い合っていたいって思うのは子供なのかな?」


「そんななぞなぞみたいな問いかけ止めない?」


ケンが寝返りを打ってこっちに顔を向けるのが暗闇の中でも分かった。

常夜灯もない真っ暗な世界は人の心を不安定にすると同時に素直にするのかもしれない。


「私と一緒にいることで雅紀を追いこんでるような気がして。なんだかダメにしちゃってる気がするんだ」


雅紀からの手紙を読んでからずっと心につっかえていたこと吐き出すことができた。


ただただ責任を感じて、責任を取るために側にいてくれてるんじゃないかってそう思っていた。

もう雅紀は私のことなんか好きでもなんでもなくただ傍にいてくれるんじゃないかって。


「今日みたいに素でいられないの。怖いんだよ。なのに意地悪ばっかり言っちゃって可愛くないの」


「ほんとにあいつのこと好きだからなんじゃない?


「好きだから?」


「好きだからこそ自分のいい面ばっかり見せようとして、気持ちが強すぎて焼もちやいて試すような態度取ったりするんだろ。でもそれは紙一重の感情で、互いに好き同士の間はいいけどどちらかの感情が離れ始めるとただのうざい奴になる。簡単なことだろ」


ケンの言う通りなのかもしれない。

本当はもっと簡単で純粋なことなんだ。

なのにこんなにも感情がこんがらがってしまった今では好きで居続けることが辛いことでしかなかった。
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