10年越しの恋
=秋=

予備校での授業や模試に忙しくしていた雅紀。

私も選択していた実習科目に含まれる2週間のボランティアに通っていた。

児童保護施設。さまざま事情により両親と暮せない子供たちが生活する場所だった。
時代を反映してか、やはり虐待により保護された子供が多いと聞いた。

初日「こんにちは」とあいさつしながら入っていった私に、笑顔で思いっきりボールを投げつけてくる男の子。ふざけているにしては球の勢いが強い。
とまどう私に施設長が説明をしてくれた。

「虐待を受けて育った子は、同じようにしか愛情を表現できないことが多いんです。だから人を叩いたり、ああやって乱暴な態度を取る。でもそれが彼の愛情なんです」

切ない、胸が締め付けられるような体験だった。

数日後、久しぶりにゆうからエアメールが届いた。

”瀬名、元気にしてる? 私は留学を終え来週帰国します。帰ったら日本にいるみんなに手伝ってもらってエントリーした会社訪問だ! とりあえず報告まで”

現役で大学生になったゆうは交換留学で去年3年生の5月からアメリカへと渡っていた。

もう1年以上が経ったんだ…。ふと時の流れの早さを感じた。

帰国したゆうを囲んで帰国祝いのパーティ。
たくさんの土産話を聞きながら、私たちは飲んで騒いだ。

二人で過ごす2回目の雅紀の誕生日。19歳になった。

今年もレストランを予約して、お祝いをした。
プレゼントは時計。ステンレスの大きめなフェイス。
大きな手に細くしまった雅紀の腕にぴったりだと思った。

「これからもずっと、二人で」

そう約束した。
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